ご相談Q&A
うつ病

相談
IP08_A33.JPG 現在、うつ病で薬物療法を受けています。仕事はしておらず専業主婦で夫と子どもが一人います。子どもが帰ってくるまでに済ませておかなければならない一通りの家事や、夫から頼まれる公共料金などの支払い・手続きなど、気分が憂鬱で身体も重くこなすことができません。できないことでさらに自己嫌悪に陥ってしまいます。診察の時は自分の辛い気分や状況のことは話しますが、生活の中で実際やらなくてはならない具体的なことについてどうしたらいいか相談にのってもらいたいと思います。

お返事
 生活上の具体的な物事をこなすことができず、ご自分を責めてしまい落ち込んでしまっているようですね。また、ご相談にあるような家事や各種手続きなど生活上で具体的なことへの対処について先生に言いづらいとのことですが、そのような生活上の具体的な相談は当院の相談員が面接にてお伺いしております。
 家事についてお悩みでしたが、患者様と一緒にできる部分から探していったりします。掃除・洗濯・料理全てをお子さんが帰ってくる夕方までに終わらせるのは大変です。例えば、その日の優先順位をたて、「料理から初めてみる」、料理は混乱して作れないのであれば「お惣菜を買ってくる」など具体的な内容を考えていきます。もし、お子さんやご主人に家事ができない申し訳なさを感じていらっしゃるのであれば、お二人へ患者様ご自身の病状の説明の仕方を一緒に考えることもあります。各種手続きについても、うつ状態がひどい時は書面の内容が頭に入ってこない場合があり、そういった書面を一緒に読んで、内容を確認するといったお手伝いもしております。日常の具体的な相談から、医療費が払えないといった経済的相談や福祉制度についての相談等もお伺いしております。
(当院の精神保健福祉士より)

相談
  現在、うつ病で薬物療法を受けています。出勤しても、集中できずいつの間にか時間が過ぎていて、処理しなければならない書類がどんどん溜まっていき、その処理を翌日に延ばしては、上司から注意を受け、さらに落ち込んで、集中できなくなるという悪循環が続いています。上司から注意を受けても、過度に落ち込まず、書類に手がつけられるようになりたいのですが、薬物療法以外にも何か方法はありますか?

お返事
IP08_B28.JPG ネガティブな考え方による悪循環にお悩みのようですね。ご相談のケースですと、薬物療法以外にも、例えば、当院の相談員と面接の中で、ご自身の気分や行動、考え方などについて、一緒に整理してゆくやり方があります。面接内容の例としては、前回の面接で宿題としてあげた内容を報告してもらったり、その時、気になることを伺ったりします。宿題は「うつ評価表」「不安評価表」などのツールを使って、日々の自分の気分・感情に点数をつけてもらったりします。また自分の思考パターンを観察してもらい、実際の困った場面でどのような対処法があるのかなどを、相談員と話し合いながら考えていきます。
 今回のご相談では、上司から注意を受けても、そこまで落ち込むことなく仕事が続けられる程度の状態になりたいということですので、例えば、日々の宿題や相談員との面接を通し、「上司に叱られる」という状況に対し、「いつも自分がミスをしないか見張られている。自分は能力のない人間だと思われている。」という自動的に浮かんでくる思考があることに気づけるようにしていきます。その思考によって、「無気力感が90%」くらいでてくるので、「仕事が手に付かない」という行動が現れるという一連の自分自身の認知のパターンを自覚します。それを自覚することによって、今度は「上司に叱られても、人間的に否定されているわけではなく、現時点で書類が溜まっていることを注意されているだけ。注意されて悲しいけど無気力感まではいかないようにする」というようにマイナスな思考部分の対処法を考え、実際に現場で実践してみるということを繰り返していきます。   
 これらのように、自分の考え方や気分の生じ方を自覚し、マイナスな思考に対して新しい前向きな考え方を知っていくと、自身の症状をコントロールしたり、悪循環の状況に陥らないような対処法を患者様自らが考え出せるようになっていきます。すぐにできるものではないので、宿題や面接を通じて一緒に焦らずゆっくりやっていきましょう。

IP08_B32.JPG相談
 現在、うつ病で薬物療法を受けています。調子の方はかなりよくなったのですが、主治医の先生からは、「しばらくこのままで様子を見ましょう」といって、薬を減らそうとしません。このまま、薬を減らさないで大丈夫なのでしょうか?いつまで薬を飲まなければいけないのでしょうか

お返事
 いつまで内服すればいいのかという問題は、今までに多くの研究がされています。その中から、信用度が高く正確なものを知っておくべきですね。
 うつ病の寛解後(remmision)の継続療法と回復後(recovery)の維持療法についての最新の総説は、名古屋市立大学の古川壽亮先生(2006年までの論文をメタ解析したもの)が詳しく述べています。(Long-Term Treatment of Depression With Antidepressants: A Systematic Narrative Review, Can J Psychiatry. 2007 Sep;52(9):545-52. Review. )以下がその内容です。

depression_remission.gif・薬物療法開始初期4週間ベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用することは抗うつ剤単剤よりもよい。抗うつ剤の内服量は少ない量でも標準量でもそれほど大きな効果の差はなかった。
・抗うつ薬で治療を始めた人の半数は、ほぼ3ヶ月以内に寛解状態(remission)になる。寛解にならなかったうつ病患者で、抗うつ剤の増量をした場合も別の抗うつ剤の変更をした場合も、統計的に有意に症状がよくなった(改善率の向上)という証拠(エビデンス)は全くみられなかった。リチウム・甲状腺ホルモン・アリピプラゾールを加える強化療法(augmentation)のみ効果がみられた。
・寛解後の継続療法は、3-9ヶ月間は抗うつ剤の量を減らさずに様子を見る事が必要。その後回復(recovery)して抗うつ剤を同じ量で内服する維持療法は再発率を半分に抑えるということは様々な研究で証明された。(ただし、維持療法は32-40週がベストで、それ以上継続しても再発率はそれほど変わらない)3年間維持療法を続けることによって、再発抑制率は少しアップして60%まで抑えることが出来る。
・うつ病に初めて罹患した人が抗うつ剤を内服せず1年以内に再発する確率は10-20%、3年以内に2回以上のうつ病の状態になった人が寛解になった後抗うつ剤を内服せず1年以内に再発する確率は40-50%(80%という報告もあったがメタ解析では40-50%)である。
・ここのケースでは、個人再発率(Patient expected event rate for relapse)、経済的負担副作用などを考えた上で、維持療法をするかを判断すべきである。

 以上をみていかがでしょうか?以上を総合して読むと、寛解(remission)に達しても少なくとも3-9ヶ月継続療法を行って回復(recovery)まで持っていき、回復後再発防止のために約32-40週は抗うつ薬を内服していた方が良い、ということになります。しかし、初発のうつ病患者でストレスの少ない環境で生活が出来る人であれば、再発率も10-20%なので回復後は継続療法をしないで服薬をやめても良いとも考えられます。その当たりの判断は、信頼できる主治医と相談した方が良いでしょう。

相談
CHTI003.gif 夫が1年前からうつ病になって治療を受けているのですが、あまり調子が良い状態ではありません。病気になる前、調子が良かったときは、家族とも良く話をしたのですが、最近は仕事のことばかりで、私ともほとんど話をしていません。心配ではあるのですが、一緒にいるだけでも息が詰まる感じです。何とか夫の支えになってあげたいのですが、そう思えば思うほど自分自身が辛くなります。そんな自分がなんて薄情な冷たい人間なのだろうと感じて、自己嫌悪になってしまいます。
 これから、どのように夫と接していけばいいのでしょうか

お返事
 1年間もご主人へのお気遣いは大変であったことと思います。うつ病にかかられた方は、過度に卑屈・自責的な発言が多かったり、逆に急にイライラして怒り出したりと周囲におられるご家族は大変だと思います。特にご主人は働きながら治療をしているのであれば、ハラハラすることも多いはずです。
 うつ病は「活動も休息も適切にできなくなってしまった状態」と平井孝男は述べています。これは非常に当を得ている表現で、うつ病の方は元々まじめな方が多く、頑張りすぎる傾向にあります。「活動の時間」=仕事の時間が延びてしまい、帰宅してからも仕事のことばかり考えている。「休息の時間」をとることが非常に下手です。それにもかかわらず、「自分はまだまだ頑張りが足りない」と思いこみ、うまくいかないと落ち込み、イライラして家族にあたる、という悪循環を繰り返します。
CHTI016.gif 治療中は、良くなったりまたちょっと調子を崩したりと波を打って回復していきます。ですので、長い目で家族の方は関わる必要があります。家族の接し方としては、「本人の苦しさを思いやること」「本人がゆっくりと休養できるように気を配ること」「極端に走らず、ほどほどの大切さを示してあげること」が基本です。しかし、「思いやる」「気を配る」「ほどほど」ということはなかなか難しいことですよね。実際には、奥様としては無理をして本人に関わるのではなく、会話がなくても一緒の時間を過ごすという「寄り添う」ということで十分です。一緒にいて、息が詰まってしまうのであれば、何も話ささず好きな本を黙って読んでいることでもOKです。
 ここで、注意しなければいけないことは、ご家族にうつ病の方がおられると、それを支えている方、特に配偶者が本人が回復したあとに「うつ病」「燃え尽き症候群」になられることがあります。奥様も自分の健康に注意して、一緒に憂うつにならないように気分転換をすることも大切です。